大御所に新参者が怒られた。でも反省しない。
とある業界に参入を試みている私は、色々と切羽詰まっていて、自分の事業の一部の仕事を手伝って頂ける外注様を探していた。
新参者はつらいよ
新参者は、基本的にどこにも相手にされないが、それでも何とかして協力者をみつけなければいけない。一人では何もできないどころか、そもそも知識がないから、誰かに助けてもらわなければいけない。
大半は冷たくあしらわれる。相手してくれたと思ったら、(身分を伝えていたはずだが)私が法人でないと向こうが理解した瞬間に、仕事途中で一切音信が途絶えるケースもあった。事業に必要な資材を参考に見せてくれと言われて送ったまま、安物だけども貴重な資材が手元に戻らなくなったこともある。まあ、安物だし、食ってかかる方がコストがかかるので、諦めるけど。
会社という鎧がないとこんなもの。いちいち落ち込まずに、割り切って前に進むしかない。
そんな中でも、まだまだ大したお返しができなさそうにないような、ピヨピヨしている私に、時には親切にアドバイスをくれたり協力してくれる人も現れる。本当にありがたい。
フリーランスに逃げられる日々
そういう人を頼らせてもらいながらも、多くは法人ではなく、フリーランスの方とのお取引が中心になってきた。私も法人ではないので、向こうからみたら同じことだけど。フリーランスの方で怖いのは、最初はいい感じでも、途中で連絡が取れなくなること。
フリーランスの方は、レスが悪くなり、徐々にフェイドアウトしていく。事業を始めて4ヶ月だけど、このパターンは既に何回かあって、慣れてきた。
不思議なことに、どんなに良く見える人でも、そんなことはあり得る。
最初は人が消える度に、健気に「私に何か悪いところがあるのか」と反省しつつ、次にこんなことが起きないように、あの手この手でやり取りに工夫を加えていた。
で、今回も、本当に素敵だと思っていた業界の先輩が、突如消えた。今度は私以外の協力者(メンバー)がコトの経過を一緒にみていたので、客観的な意見を得られた。
「え、どうして?あんな人がこんな消え方するの?」
メンバーも不思議がっていた。お会いした時の素敵なイメージとはかけ離れて非常識な振る舞いだった。
これで、とりあえずは私のやり取りに問題が見当たらなそうだ、ということがメンバーの反応によって確信できた。どんなに正しく振舞っても、いなくなる人はいなくなる。感触的には8割くらい。
原因は、私の振る舞いではなくて、お金になりそうか、旨味があるか、お前に事業成功させられるのかよ、という極めて合理的な判断をしているということなんだろう。
となると、まだまだ軌道に乗ってない、始まってすらない私の事業で、人が定着するの極めて困難。最初の話に戻るが、割り切って、見つかるまでぶつかり続けるのみ。確率論でしかない。
大御所に話しかけてしまった
前置きが長くなったが、そんなわけで、フリーランスさんが消えて、事業が中断したので、別の候補を探さなければいけなくなった。
業界の外から参入した私は、業界コネクションなどなくて、検索検索で探すしかない。そんな中、「おっ」と思う会社さんがあった。
制作物はハイセンスで、経営者含め数名の事務所のようなところ。経営者は女性で、業界歴ウン十年?の大御所の様子。決しておばあさんという感じではなくて、桃井かおりのようなタバコをふかしているイメージもあれば、1年のほとんどをパリで過ごしてる、言われても違和感のないハイセンスな感じだった。
オシャンティ過ぎて気がひけるけど、私の事業に必要なものを持っていそう。競合でもありそうだけど、「企画の相談に乗ります。なんでもお気軽にお問い合わせください」とお洒落なホームページに書かれている。
遠慮して事業が潰れるくらいなら、恥をかいてでも進もう。確率論だ!
自分を奮い立たせ、お問い合わせ先にメールを送ることにした。メール内容には十分配慮したつもり。
図々しくも連絡していることのお詫び。自分が何者で、何がしたくてどのような段階まで進んでいるか、貴社に何をお願いしたいと思っているのか、もしそんな仕事を引き受ける会社じゃなければ非礼をお許しください、と書いた。
読む人に負担を与えないよう、適切な文字数で、簡潔に丁寧に文面を工夫した。
ドキドキしつつ、「ええい、ままよ」とメール送信。
大御所からの連絡と前半戦
30分後、私の携帯が鳴る。他にも電話がかかってくる予定だったので、誰だかも考えずに出てしまった。
桃井かおりのように、気だるく、ドスのきいた女性の声で、名乗った名前は、この会社の経営者本人だった。
名乗られた瞬間、最大の敬意を払って挨拶したつもり。だが、挨拶には反応されず、「さっきメール頂いた件なんだけど、日本語の意味が分からない」と言われた。
彼女に指摘されたのは、私が目指すところで掲げた言葉の曖昧さだった。確かに、業界ど真ん中で生きてらっしゃる人にとって、ビジネスマン上がりの私がお金目的で発したような軽い言葉は癇に障ったのかもしれない。センスってなんだよ、と。
少し揚げ足とりにも思えたが、電話までかけてきて、こちらの意図を聞こうとしてくれるだけありがたいんだと思って、一生懸命説明した。
「ふ〜ん」
興味なさそうな返事が返ってきた。
「この業界ね、厳しいのよ。ルールは厳しいし、制作費だって相当かかるし。とてもじゃないけど見合わないと思うわね。」
否定。
「どこで売るおつもり?販路は?」
私は、本当はAやBで売りたいけど、最初はどこも相手にしてくれないから、ネットを使いつつ、色々工夫しながら進めていくつもりであることを伝えようとした。
「ネットで売れるわけないじゃない。ネットに商品並べてもお客は来ないのよ」
はい。普通に知ってますし。
私も、簡単だと思って始めるわけではなくて、この事業に未来がある、やりたいと思って始めて、色々な制約条件もあるけど、それをあの手この手でなんとかクリアしていくのが事業なので。と、暗に「AやBで最初から取り扱ってくれないから(ネットしか窓口持てないから)、うまくいかない」という論法がいかに馬鹿げているかを説明しようとした。
もし、彼女の言い分が正しければ、新しい人は何も始められないことになる。だけど実際は世の中そうはなってなくて、誰かが何かを始めて成功している。(もちろん失敗しているケースもあるけど)。
彼女の中に答えがあったのだろうか
最初から、日本有数のデパートに置いてもらえて、コストを安くするために膨大な量を生産できて、在庫を抱えても死なない会社しか参入してはいけないとでも思っているのだろうか。それだと、単なる既存業者。新しいモノを売るわけではないケース。新しいモノを作って売ろうとする時、彼女の条件を満たす人(会社)の方がレアなんじゃないか?
毎年、数多く発表される商品は、資金タプタプの大企業からしか出てないのか?
幸い、私の周りには、異業種から参入してAやBに大々的に商品アピールをしてもらっているお手本もあって、私も事業を始めるにあたって、調べたり偶然聞いた話の中に、同様のケースは多々あった。
分からないなりに手探りで始めて、8年目の今や20億円企業。従業員も100名に近づいている。
売上や従業員数で勝ち負けということでもないが、業界歴ウン十年の大御所より、素人でスタートして、最初はネットでしか販路を持てなかった若者の方が売上も従業員も大御所の事務所より多い。今も、AやBにも置かずに、会社は成長中。このくらいの話は決してめずらしくないレベル。
大御所とのやり取り後半
「で、おたくが私たちに頼みたい仕事ってなんなの?」
はい、メールに箇条書きで書かせてもらった内容ですが、と説明する。わざわざ電話くれるのに、メールの中身は見てない?と思いながら。
「そんな下請けみたいな仕事を?私たちに?」
決してそんなつもりでお願いしようとは思ってないが、内容的にはこちらのためにお力をお貸し頂きたいということで。そういうお仕事をされているのかどうなのかも分からずに失礼ながら打診させて頂きました(企画相談乗るって書いてあったし)。
「どうやって、私たちのサイトみつけたの?」
(え、サイト見つけちゃいけなかったの??)えっと、業界の会社一覧が掲載されているサイトを見つけて、こちらの事業内容に即した会社を辿ってみつけました。
「あ〜。なるほどね。私たちがどんな仕事してるか知ってらっしゃる?」
あ、はい。サイト拝見しましたので、自社で色々と作られていらっしゃるんだな、と。(でも、企画相談乗るって書いてあったし)
「ええ、そうなの。なので、とてもじゃないけど、こちらの社名立てずにあなたの事業のために下請けみたいな作業をやらされるって、そんな仕事引き受けてないのよ。また、一緒に何かやる場合も、こちらのテイストに合わないものはお断りするのよ。」
ああ、そうなんですね。(一応メールにも予め、違かったらゴメンねと断り入れてたはずだけど)よく分からずにお願いなんかしそうになって本当に失礼致しました。
で、機嫌悪く切られました。
大御所に申し訳ないと思うこと
彼女がわざわざ電話をかけてきた理由は、内容の確認なんかではなく、ましてやアドバイスでもなく、ただただ、雑魚キャラの新参者の分際で、大御所に話しかけた私に対する怒りを伝えたかったんだろう。
この点、本当に申し訳ないと思います。
雑魚キャラなのに、大御所に軽々しく下請け仕事を発注しようとしてしまいました。企業サイトの文言を真に受けた私が未熟すぎました。
ただ、次に似たような機会があっても、同じことをすると思います。確率論なので。私は、明らかな間違いを除いて、分からないところには突っ込んでいくしかないからです。一か八かで行ったところで、横に逸れた話やつながりから、事業が動く可能性もあるからです。
事業アドバイスは聞かない
そして、事業が成功するかどうか、これは大御所のいうことは真に受けません。意地ではなく、なんだか客観性にかけるから。